リレー物語 Advent Calendar 2016

これはAdvent Calendar 2016にて行っているリレー小説の断片です.

第十章 後昵談 腕時計の針を見ると午前三時がもう終わろうかというほどの時間であった。僕の愛用している腕時計は文字盤が無駄にたくさん付いているクロノグラフと呼ばれるものであるため、その日の日付や曜日まで腕時計のみで知ることができる。そしてその…

第九章 共感核 〈かなちゃんのこと、口外されたくなかったら、私と取引して〉 猫田さんの言葉を思い返しながら自転車を押して自宅に向かう。 これで僕は当分身動きを拘束されてしまったようだ。猫田さんはことのほぼ全てを把握していたし、最近の西口先生の…

第六章 猫過振 私は何をしているのだろう。 深夜零時。自宅のベランダでタバコに火を点けながらそう考える。 今日は戸村くんと話しておかなければならないことがあったはずだ。決して進路の話ではない。ましてや恋の話でもなかった。 私はどうも生徒の私事に…

第四章 遷急転 母親の朝食を支度する音で目が覚める。 昨日はあれから一度も目が覚めなかったらしい。 この時期は掛布団がなかなか身体から降りてくれないため、長時間かけて構築された心地よい空間で睡眠の余韻を味わう。窓の方を見るとほんのり明るみ始め…

第二章 夢幻隙 まだ暗いのに目が覚めてしまった。 何だか嫌な夢を見たような気がするがもう覚えてはいない。 時計を見ると短い針が数字の 2 の辺りを指している。この暗さで午後二時ということはあるまい。 「ちょっと昼寝し過ぎたかな」 誰に聞かせる訳でも…